夏祭り
今日は夏祭り
まだ6月だが
浅間神社では
毎年6月の初めに祭りが行われる
季節はちょうど春から夏に変わる頃
町内の公園では白いビニールハウスが設置され
町の人達が着物姿で生き生きと活動している
子供達はワクワクした気持ちを隠せない様子で
中学生なども自転車で公園に集まり
みんなで祭りへ行こうと笑顔で会話をしている
日が暮れてくると
笛や太鼓の音が鳴り響き
夏祭りの雰囲気をいっそう色濃くしていた
外に出ると
ささやかな風が流れ
春から夏に変わる途中の独特の生暖かいそよ風が頬をなでる
とても心地いい
僕は家を出ると前の通りを歩いて
環状七号線の横にある歩道へ向かった
歩道に行くと
ズラッと屋台が立ち並び
たくさんの人達でとてもにぎわっていた
着物姿の女の子達や
髪を金髪に染めた中学生
子供連れの家族や
若いカップルなど
みんな目を輝かせて夏祭りを満喫しながら通りを歩いている
僕の心も自然とはずんでいるのがわかった
小さな子供達がいろんな屋台を見ながら
あちらこちらと夢中になって走り回っている
そんな姿を見ながら
自分も子供の頃は
お祭りの日になると夢中で遊び回っていた事を思い出す
しばらく歩いていると
浅間神社の中に到着した
すると
お寺の横にある階段から聞き覚えのある声が響いた
「しょーたー!」
振り向くと
矢崎君が笑顔でこっちに手を振っている
矢崎君は僕の小学校からの親友で
とても背が高く
モデルのような顔をしているので
小さい頃から女子には人気があった
もし矢崎君がテレビや雑誌に出たなら
今、人気のタレントすらも一気に追い抜いて
ものすごい人気になると思う
それに比べると
僕は普通の男だ
背が高いわけでもないし
顔がカッコイイと言われた事もない
女子からも気軽に親しまれる事はほとんどないし
矢崎君のようにラブレターをもらったり
告白されたりするなんて
僕にとっては夢のまた夢だ
とにかく
そんな僕と矢崎君は
今日
お祭りで遊ぶ約束をしていて
今ちょうど待ち合わせ場所に着いた所だ
そして
僕達はにぎやかなお祭りで
金魚すくいや
輪投げ
ゴムのチューブに入ったアイスなどを食べながら
楽しい一時を遊んだ
しばらくして
僕と矢崎君は
神社の裏にある石の階段に腰かけていた
心地よいそよ風が頬をなでて
夏祭りの太鼓の音が風情を響かせている
ふと矢崎君が僕の方を見て話しかけてきた
矢崎「そういえば、しょーたってさぁ、相変わらず好きな人とかいないの?」
僕は目の前の地面の石を蹴りながら言った
「うーん、いないかなー」
そう
僕はもうかれこれ8年ぐらい恋をしていない
初めて恋をしたのは
小学生の頃
8歳か9歳の頃だったか
ちょうど物心がついた頃で
クラスの女の子を好きになった
けど
結局自分からは何も行動を起こせないまま
小学校を卒業し
それ以来、恋という恋をしていない
一方、矢崎君の方はどうなのか?
というと
僕はよく知っている
矢崎君の好きな人は同じ学校の女の子だ
その子の名前は
高木理沙
最初のきっかけは
みのる君達と沖縄旅行に行った時
罰ゲームでゆうき君と僕でナンパしに行った相手
それが
高木理沙さんだった
後で矢崎君が教えてくれたけど
実は矢崎君は前から高木さんの事が好きだったらしい
僕も最初聞いた時は驚いた
あんなにしょっちゅういろんな女の子から告白されているのに
いつも断ってばっかりだから
まわりのみんなは矢崎君が女嫌いなんだって言うけど
そうじゃない
僕は小学校からの親友だからよくわかってる
矢崎君は
これでもかってほど
筋金入りのチェリーボーイなんだ
女の子と話をするだけで
顔が真っ赤になって
うまく喋れなくなってしまう
実は
かわいい人なんだ
一方
その頃
お祭りの近くの公園では
2人の女の子がベンチに座っていた
高木理沙
と
佐藤円香
だった
公園では子供達が滑り台の上によじ登り
花火などをしながら
キャッキャと遊んでいる
公園の前の通りでは
花火の煙りの匂いがほのかに漂い
ちょうちんを持った町内会の人達が
楽しそうにお喋りしながら歩いている
高木理沙はりんご飴を食べながら
夏祭りの雰囲気を楽しんでいた
少し離れた所から
3人の若者風の男の子達が
まどかと理沙の方を見ながら何やら言っている
「おい!、見てみな、あそこに座ってる2人の女の子
左に座ってる方、超かわいくねー?」
「うお!、本当だ!」
彼等は佐藤円香を見ていた
確かにまどかの美貌は校内でも有名で
矢崎と2人で並ぶと
ハリウッドスター顔負けの美男と美女という
すごい絵になる事も知られていた
男達はさらに佐藤円香を見て言った
「おまえちょっとナンパして来いよ!」
「なんでだよ、お前が行けよ!」
「え!?、、、本当に行くのかよ?」
「いや、ありゃ絶対に彼氏いるだろう」
「だよなー、、、くそー、、かわいいよなーちくしょー!」
「どうすんだよ?」
「おまえ行けよ!(笑)」
などと
はしゃぎながら通りの向こうへ歩いて行った
そよ風が理沙の髪を撫で
サラサラとなびいている
理沙は食べていたリンゴ飴をまどかの口元に差し出して言った
理沙「どう?、元の体に戻った感想は(笑)」
まどかは理沙の差し出したリンゴ飴を一口食べて言った
まどか「やっぱり自分の体が一番いいよ!(笑)
変に男らしく振る舞おうと頑張らなくていいし
オカマっぽいとか言われなくて済むし(笑)」
説明しよう
この佐藤円香さんは
数カ月前にゆうきという男と頭がぶつかった衝撃で
体が入れ代わってしまい
女の子なのに男としての生活を余儀なくされていた
そして
この前、やっと体が元に戻ったのだ
理沙は少し笑いながら言った
理沙「それにしても本当に元に戻って良かったよね(笑)」
まどか「そうだよ!、あのまま一生ゆうきの体で死ぬまでなんて絶対に嫌だよ!(笑)」
理沙「だよね(笑)、でも、体が入れ代わってる間は、ゆうき君と毎週会ってたんでしょ?」
まどか「うん、だってあいつ私がちゃんと見てないと何するかわかんないんだもん(笑)」
理沙は少し笑った後
興味深々で目を輝かせながら
まどかの方を見て
少し煽るように言った
理沙「でも、実際どうなの?、よくマンガとか映画とかであるけどさ
そうやって体が入れ代わって、2人でいろいろやってるうちに
相手の事が好きになっちゃったりとかって(笑)」
一瞬まどかの動きが止まったが
すぐに真顔になって言った
まどか「そんなのあるわけないじゃん!、だって相手はあのバカゆうきだよ?」
理沙はさらに煽るように言った
理沙「どうかなー?(笑)、そんな事言ってて本当は好きだったりして(笑)」
まどか「違うってば!、あんなだらしない奴!」
まどかはちょっとムキになっていたので
理沙はそれ以上つっこむのを止めてみた
すると
今度はまどかが理沙の方に顔を突き出して言った
まどか「そういう理沙はどうなの?、好きな人ぐらい出来たでしょ?」
すると理沙は少し頬を赤らめて言った
理沙「まどかは、、、しょーた君ってどう思う?」
まどか「ん?、しょーた君かー、うん、優しいし、いい人だと思うけど、なんで?」
理沙「この前、川で溺れてる子供を助けた時あったでしょ?」
まどか「あ、あの日ね(笑)」
理沙「なんか私、あの日、しょーた君が子供を助けてる時の真剣な顔を見てから、、、」
と言うと
理沙は軽くため息をつき
もの悲しげな顔で夜空を眺めた
説明しよう
なぜ高木理沙が悲しげな表情なのか?
高木理沙は
密かに矢崎が自分の事を好きだという事を知っていた
長野のスキー場へ行った時
みのると矢崎の会話が聞こえてしまったのである
そして
また
高木理沙は
しょーたと矢崎が昔からの親友で
矢崎はとっても傷付きやすい人だという事も知っていた
それに
まどか、理沙、しょーた、矢崎
この4人は
仲良しの友達4人組のような関係にあった
なので
高木理沙は
もしも
自分がしょーたに恋している事が
矢崎に知れたら
今のさわやか友達4人組の関係にヒビが入るのではないか?
と木にしていた
いや
気にしていた
そして
高木理沙はこの問題を1人で抱え込み
葛藤していたのだった
この事を知らない佐藤円香は
もの悲しげに夜空を見つめる理沙に
顔を近づけて言った
まどか「もしかして、しょーた君に恋しちゃった?(笑)」
理沙は遠くを見るような目で言った
理沙「うん、、なんか、、、気がつくとしょーた君の事考えちゃってたり
しょーた君に会うと、なんだかドキドキしちゃって
今までみたいに自然に話しかけられなくなってるような気がするんだよね、、」
理沙は恋をしてはいけない相手に恋をしてしまった乙女のような瞳をしていた
まどかはその顔を見て
理沙に何かを言おうとした
次の瞬間
2人の目の前に3人の男が現れた
みのる、ゆうき、鈴木
の
3人だった
みのるが2人に気づいて言った
「あれ!?、まどかちゃんと理沙ちゃん!?」
理沙とまどかは笑顔でみのる達の方を見て言った
「こんばんわー(笑)」
少し離れた通りから
笛や太鼓の音がそよ風にのって流れてくる
夜空では雲のすき間から月がのぞいている
理沙は鈴木を見て笑いながら言った
理沙「鈴木君、なにその格好(笑)」
鈴木の体には
ロケット花火やら
打ち上げ花火やら
いろんな噴射系の花火が巻き付けてあって
かなり異様なルックスになっていた
滑り台で遊んでいた子供達も
なんだろう?
と
不思議そうな目で鈴木達の方を見ている
ゆうきが鼻をすすりながらノリノリで言った
ゆうき「実験だよ、実験!」
まどかは
ゆうきを見ると
少し嬉しそうな顔を隠しながら言った
まどか「なんの実験なの?(笑)」
みのるが横から口をはさんだ
みのる「人間ロケットだよ!」
まどかと理沙は不思議そうな顔をした
「人間ロケット!?」
みのる「そう、ちょっと協力してくんねーか?」
そして
5分後
公園にいた子供達と
理沙達とみのる達が
手にライターを2個づつ持って
鈴木のまわりを囲んでいる
みのるがワクワクした顔で言った
みのる「いいか?、みんな、いち、に、さん、で一気に火をつけるからな!」
すると
横にいた子供が口をはさんだ
「お兄ちゃんやけどしないの?」
まどかも言った
まどか「そうだよ!、絶対、鈴木君やけどしちゃうよ!」
みのるが鈴木の肩に手をのせて言った
みのる「大丈夫だよな?」
鈴木は余裕の表情を見せた
鈴木「ふっ、、、オレは人間魚雷の免許持ってんだぜ」
すると子供がまた言った
子供「おじちゃん!、本当に大丈夫なの?」
鈴木は子供の両肩に手をのせて
優しい笑顔で言った
鈴木「坊や、おじさんはね、月からやってきたんだ
だから、今日、こうして月に帰るんだよ」
子供「つき?、、、」
子供はいっそう不思議そうな顔をした
そして
みのるが大きな声で言った
「じゃあ用意はいいか?
みんなで火をつけるぞ
いーち!
にーい!
さーん!
全員が両手に持っていたライターで
鈴木の体に巻き付いている花火に火をつけた
シュルルル!
プシュッ−!
花火には一気に火がつき
みんなは「離れろ!」というみのるの声とともに鈴木から離れた
鈴木の体は
シュ−ー!!
という音と共に
見る見るうちに眩しい花火の光に包まれた
次の瞬間
「ダァ−ーー!!!」
という鈴木の雄叫びとともに
鈴木の体が宙に浮いた
みのるとゆうきは完全に興奮していた
「すげー!、本当に飛んだぞ!!」
鈴木は
プシューーー!!
という
けたたましい音とともに
まるでロケット花火のように飛んだ
そして
そのまま
となりの家の2階の窓に突っ込んだ
ガシャーンッ!!
家の中から悲鳴が聞こえてきた
「キャー!!」
みのる達は
その場から逃げ去った
そして
次の日
キーンコーン♪
カーンコーン♪
いつものように学校が終わり
僕は学校から帰る途中だった
歩いていると後ろから声がした
「しょーた君!」
ふと
振り返ると
佐藤円香さんが立っていた
僕に向かって手招きしている
まどか「ちょっといい?」
僕が少しビックリしたような顔をしていると
まどかさんは優しい笑顔で言った
まどか「ちょっと話があるんだけど、公園でも行かない?」
僕は弱気な返事をした
「う、うん、いいよ(なんだろう?)」
そして
10分後
まどかさんと僕は近くの公園のベンチに座って
たわいもない雑談をしていた
公園の木々がザザ−っと風になびき
土の地面にきれいな木漏れ日をつくり出している
葉っぱ達は太陽の光を浴びてエメラルドグリーンのように輝いている
他のベンチでも
本を読む主婦や
競馬の予想をするおじさんが
人生のなんでもない一日の幸せな一時を過ごしている
しばらくして
僕は我慢できなくなって
まどかさんに言った
「ところで、、、話っていうのは、、なに?」
まどかさんは少し真面目そうな顔になって言った
まどか「あのね、今日の事、理沙には内緒にしておいて欲しいんだけど、、」
僕はゴクリと唾を飲み込んだ
「うん、、」
一体なんの話なんだろう?
まどかさんは話を続けた
まどか「実は、、、理沙がね、、、」
僕は息を飲んだ
そして思った
なんだ?
なんの話なんだ?
良い事?
悪い事?
僕は不安でドキドキしていた
まどかさんは僕の目を見て言った
まどか「理沙がね、、、しょーた君の事、、、好きなんだって、、」
「え!?」
僕は目を丸くした
一瞬
頭が真っ白になった
幸せなのか
不幸なのか
自分でもわからない
今まで味わった事のない複雑な気分になった
理沙さんが僕の事を?
でも
矢崎君が、、、
その頃
ゴンゴンはカラオケBOXで
「あ〜あ〜♪ 高校〜♪ さんねんせい〜♪」
と
舟木一夫の「高校三年生」を熱唱していた
つづく(笑)
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