ウメさんの事情
花が咲いている
綺麗な花がいくつも咲き乱れている
池上本門寺では
陽気な日射しの中
桜が満開だった
みのるは砂利道をジャリジャリと踏みながら
陽気な気分で寺を見たり
桜の木や
道を行き交う人々の雰囲気にひたっていた
ふと前を見ると
ちょっとした茶屋があった
みのるは赤い和風のじゅうたんを歩いて
その茶屋に入って行った
しばらくの間
外にある野外の京都風味の椅子に座り
近くに生える竹や
目の前にある池などを見ながら
しばし春のひとときを過ごした
隣に生えている桜の木から
チラチラと白い花びらが落ちては
木漏れ日の照らす茶色い地面の景色となっていく
みのるは抹茶を飲むと
ほんのりしたほろ苦い旨味が口の中を包み込み
そのあと横に置いてある和菓子を手にとって
口に頬張ると
今度はほんのりした甘味が口の中に広がり
抹茶のほろ苦い旨味と調和し
不思議な快感を味わっていた
あまりのおいしさに
みのるは声をあげた
みのる「ぷひー!!、うめーー!!」
すると
室内にいた客らが声の大きさに振り向いた
みのる「ん?」
みのるが振り向くと
客達は少し驚いたような顔をして
みのるを見ていた
みのるはすかさず
「なに見てんだコラァ!!」
と
首を上下に振りながら
ハの字に曲がった眉で
最強にガンをくれながら
レジの方に歩いて行った
他のお客らは何ごとか?と驚いた様子で
みのるの行方を目で追っている
レジにいた女の店員も驚いた様子で目を大きく開けて
みのるを見ている
みのるはそのままレジの方へと歩いていき
そのまま出口から出て行った
しばらくして
みのるは帰って来なかった
そして次の日
いつものように学校が終わり
みのるとゆうきは
学校の近くにある駄菓子屋にいた
駄菓子屋の中は
色とりどりの駄菓子やアイスなどで
綺麗に彩られていた
入り口の所にはカードが吊られていて
そのすぐ外には2台のコンピューターゲームと
1台のパチンコ玉を使った木でできたアナログ式のゲームがあった
みのるはガリガリ君のソーダ味を食べながら
ゲームをやっていた
みのる「よし! 入った! 当たり50円だ!!」
ゆうきは冷えたアイスの「みぞれバー」をおいしそうにカリカリ食べながら
みのるのすぐ横で楽しそうにゲームを見て言った
ゆうき「おおー! やったじゃねーか! おばちゃんとこ行こうぜ!」
みのるとゆうきは
2人で駄菓子屋の奥に入って行った
突き当たりまで行くと
奥は普通の家の中になっていて
あずき色の小さな折り畳み式のテーブルがあり
その上にはやかんが置いてあった
その奥では70年代式のカラーテレビが
サッカーの試合を流している
みのるは店の奥を覗き込むと声を出した
みのる「ウメさーん!?」
ウメ「何度も言うんじゃないよ!」
みのる「うわ!!」
みのるがすかさず上を見上げると
89才にしては可愛いらしい顔をしたお婆ちゃんが
天井に張り付いていた
みのる「一回しか言ってねーだろ!」
みのるの横にいたゆうきが
目をまるくして天井に張り付いているウメさんを見ながら言った
ゆうき「っていうか天井に張り付いて何やってんだよ!」
ウメ「何度も言わせんじゃないよ! 雨もれの修理に決まってるだろ!」
ゆうき「だから一回しか言ってねーだろ!」
こうして
みのるはウメさんにゲームから出た当たり50円券を渡し
チョコでできたビッグバーをもらった
と
その瞬間
プシュッ!
プシュッ!
と
家の奥から鈍い音が聞こえた
みのる「なんだ!?」
みのるとゆうきが振り向くと
そこには黒いスーツに身を固めた男が2人
ピストルのような物でウメさんを狙って撃っている
プシュッ!
プシュッ!
ウメさんは目にも止まらぬスピードで
まるで映画のマトリックスのように
一つ一つの玉を手で弾きながら
2人の男の方へ歩み寄って行くと
「ホワァチャァ!!!」
と
ブルースリーのようにかん高い声を上げ
ストリートファイターの竜巻旋風脚のような動きで
空中に舞いながら回し蹴りをして
2人の男の顔面に命中させた
ガッ!!
ゴッ!
男1「ごはぁっ!」
男2「ぐあぁ!!」
2人の男は
ドサッ
と
その場に倒れ
意識を失った
みのるはビックリした目で言った
みのる「な、、、なんだ、、こいつら!!」
ゆうきも驚いた表情を隠せない様子で言った
ゆうき「ウ、、ウメさん! こりゃ一体どういう事だよ!?」
ウメさんは畳の上をゆっくりと歩きながら
手をパッパと払い言った
ウメ「こいつらはアメリカの秘密組織から送られてきたスパイさ」
みのる「ス、、スパイ!?」
ウメさんは倒れた男の手にある銃をとって見せた
ウメ「ほら、麻酔銃さ」
みのるはすかさず銃を手にとって
驚いた様子でウメさんを見上げて言った
みのる「あ、、、あんた、、一体、、何者なんだ!?」
ウメさんは笑いながら言った
ウメ「人にはいろいろ裏の事情ってもんがあんのさ」
そして
駄菓子屋からの帰り道
ゆうきとみのるは
春うららの桜散る通学路を歩いていた
近くにある公園でも桜が満開に咲いていて
昼の爽やかな空を綺麗なピンク色に染めている
公園のすべり台では
子供達がキャッキャ!と楽しそうな声を上げ遊んでいる
桜の下では
水色のビニールシートが敷かれ
近所のおじさん達がそれぞれの酒を持ち寄って
ささやかな春のひとときに
会話をはずませては笑顔を見せている
ゆうきとみのるは
ちかくの川沿いを歩いていた
その川は
かつては魚の住めないようなドブ川だったのだが
近ごろは環境を守る意識の高まりから
水を綺麗にする運動が行われ
今では魚が住めるような綺麗な川になっていた
川べりには水草も生え
太陽の光を浴びながら
キラキラ光る水面からいきいきとした顔をのぞかせている
その川は
人が泳げるように作られてる川ではなかったので
造り自体は下水道を彷佛とさせる形だった
次の瞬間
キャー!!
突然、横の方から悲鳴が聞こえた
みのる「なんだ!?」
ゆうきとみのるが振り向くと
若い母親らしき人物が必死の形相で
母親「だれかー!!」
と
助けを求めている
ゆうき「あ!」
ゆうきがふと川を見ると
小さな子供が溺れていた
どうやら
間違って川に落ちてしまったようだ
ゆうきとみのるは
すかさず顔を見合わせた
みのる「行くか!」
ゆうき「英雄になっちまおうぜ!」
2人は川にかかっている橋の真ん中まで走って行くと
川に飛び込んだ
バシャーンッ!
しかし
ゆうきはあまりにも頭から突っ込み過ぎ
意外と浅かった川のドロドロした地面に頭が突き刺さり
抜けなくなって必死でもがいている
みのるはというと
飛び込むどころか
橋のすき間に足がひっかかり
橋から中ぶらりんになり片足だけがひっかかった状態で
「だれかー!!」
と
自分が助けを求めていた
そこへ
ちょうど学校帰りの
矢崎、しょーた、高木理沙、佐藤円香
の
4人が通りかかった
4人は楽しそうにお喋りしながら歩いていたが
高木理沙がその光景を発見すると
「あっ!」
と声を上げ
手で口を押さえ驚きの表情で
みのる達の方を指差した
矢崎はすかざす
矢崎「大変だ!」
と叫ぶと
走って橋の方に向かっていった
しかし
しょーたは既に川に飛び込んでいた
理沙とまどかが橋に駆け寄って川を覗き込むと
溺れていた子供は
無事にしょーたに保護され
岸の安全な所に運ばれて助かっていた
母親が泣きそうな表情で駆け寄り
「ありがとうございます!」
と
子供の無事を喜んでいる
矢崎は川のそこに頭から突き刺さっているゆうきを引っこ抜いた
ズボッ!
ゆうき「ぷはぁーー!!! ゲホッ!! ゴホッ!!」
その頃
橋から川をのぞいていた高木理沙は
普段は控えめでおとなしいしょーたの
意外に勇気ある一面を見て
その勇敢な姿にジーンときていた
そして
それと同時に
しょーたに恋心を抱き始めていた
その時
川の遠くの方から1人の男が泳いできた
ゆうき「ん?、誰だ!?」
みのる「鈴木!!」
競技用の水泳パンツで優雅に泳いできたその男は鈴木だった
鈴木は泳ぐのをやめて水面に立つと
ゴーグルをとって水のしたたる顔で不思議そうに言った
鈴木「おー、みんなこんな所でなにやってんだ?」
みのる「おまえこそ普段からこんな所で泳いでんなよ!!(笑)」
真っ赤な太陽の光が
夕暮れの空に鮮やかなグラデーションで雲を照らし
笑い声とともに彼等を包み込んでいる
ふと見ると
みのるが小便をしていた
ゆうき「あ、おまえ! そこでションベンすんなよ!」
矢崎「うわ!」
皆は慌てて川岸に上がった
つづく(笑)
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